超スマート社会Society5.0の実現に向けて

内閣府の未来戦略によれば、狩猟社会（Society 1.0）、農耕社会（Society 2.0）、工業社会（Society 3.0）、情報社会（Society 4.0）に続く新たな社会として、Society5.0の時代を迎えるものとされる。Society5.0の要諦はフィジカル空間とサイバー空間のリアルタイムかつ有機的な結合であり、センシング、解析、アクチュエーションの3要素が有機的に結合し、常に改善ループを回すことにより、効率性が高く、環境変化に対して頑健な社会システムを構築することが可能となる。

Society5.0においては、大量の選択肢の中から最良のものを選択する組合せ最適化問題の効率的処理が必要となる。その適用範囲は、社会システムの最適化といった極めて大規模かつ複雑なものから、翌日の作業シフトの最適化といった極めて局所的なものも含まれる。さらに、Society5.0の実現のためには、機械学習、量子化学計算、金融、セキュリティなどの高速処理も要求される。そのため、Society5.0実現のために、大規模データの高効率処理が可能な非ノイマン型コンピュータの実用化が重要な課題となっている。

近年、Society5.0における非ノイマン型コンピュータとして、イジングマシンと量子コンピュータに大きな注目が集められている。イジングマシンとは、組合せ最適化問題に特化したコンピュータである。代表的なものとしては、量子アニーリングマシン、CMOSアニーリングマシン、デジタルアニーラー、シミュレーテット分岐マシン、コヒーレントイジングマシンなどがある。一方、量子コンピュータは、量子チューリング機械の原理に基づくコンピュータであり、量子化学計算、機械学習、金融、量子シミュレーション、セキュリティなどのいくつかの数学的問題を高速処理することを可能とする汎用コンピュータである。現在、誤り耐性汎用量子コンピュータの前段階として、ノイジーな中規模量子コンピュータ(NISQ)の研究開発が世界規模で進められている。Society5.0においては、ノイマン型コンピュータと様々な非ノイマン型コンピュータとの有機的な協調「ドメイン指向コンピューティング」によって多くの社会課題が解決すると考えられている。